あなたを失いたくない〜離婚してから気づく俺様御曹司への溢れる想い

ちづるはそっと窓ガラスを開けた。

フェンスに乗り出し、俺に声をかけようとした仕草がはっきりと分かった。

「ちづる」

俺は思わずちづるの名前を口にした。

ちづるは急に振り向き、急いで窓ガラスとカーテンを閉めた。

三神がちづるの部屋に入ってきたのだろう。

俺は見つからないように三神の屋敷を後にした。

海堂さんの姿を確認した私は、自分の気持ちを叫びたかった。

あなたを愛していますと。

でもあなたの心の中にいるのは誰ですか?

私はあなたの胸に飛び込んでも迷惑ではないですか?

海堂さんへの言葉を全て飲み込んだ。

涙が溢れて、止まらなかった。

次の日も俺はちづるに会える事を願い三神の屋敷に向かった。

ちづるが俺の元に戻ってくる事を願ってくれさえすれば、連れ戻すことは簡単だ。

ちづるの意思で三神の屋敷にいるのであれば、連れ戻すことは容易ではない。

俺は昨日ちづるがいた部屋の窓ガラスに向かって石を投げた。

窓ガラスのカーテンが開き、ちづるが姿を現した。

「ちづる」
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