君の隣にいたかった。
なんていい名前なんだろう。
私にはとても勿体ない。
石蹴りをしながら家に戻る道を進む。
ううん……私の家なんかじゃない。
私の家なんか、ないもん……。
叔母さんの家なんて、私の居場所じゃない。
冷えて赤くなった指先を、両手でぎゅっとにぎりしめる。
実感無い……私、死ぬんだよね。
しかもあと1ヶ月。
空から桜の花びらがフワァッと降ってきた時、ブオォンッとバイクの音がした。
夜にこんな大きな音……近所迷惑……。
気にせず前に進んでく。
「オイお前っ!」
後ろから声が聞こえて、突然の事だったのでビクリと肩を揺らす。
それと同時に手が滑ってしまって、薬の入った袋を落としてしまった。
「あっ……」
拾おうとした時、それはバイクによって踏み潰される。
……嘘でしょー……。
「ん? なんか踏んだ?」
私の前で止まった彼が、ヘルメットを取って地面を見つめる。
う、わぁっ……イケメンさんだぁっ……。
整いすぎた顔立ちで、何より目立った金色の髪。
座ったままでも分かる高身長。
神様の仕業か……?
なんだろ……死ぬ前に目の保養でもしとけと?