期間限定マリアージュ~四年越しの旦那様はエリート社長、誓いのキスが子作りの合図~
「隣の部屋も凄く豪華だよ…結構高めのスイートルームだな…」

「へぇー…」

絶望的な状況の中を忘れるように彼は私に話し掛けて来た。

負の感情は胎児にも良くないと知っているからだろう。
でも、槇村先生の母の話を訊くとしんみりしてしまった。
「・・・俺の母親も血液型不適合妊娠で…俺を産んだんだ…その妊娠が影響して…羊水寒栓症にかかり…合併症を併発…父は手は尽くしたけど…亡くなってしまった…」

「・・・槇村先生は母親を知らないんですか?」

「写真やビデオでしか知らない…」

「・・・」

「だから…君を救いたいキモチが凄く強い…母が亡くなったのはもう三十年以上前の話だ…その間に医学も進歩している…血液型不適合妊娠で亡くなるコトは先進国では滅多に少ない。でも・・・今の状況は又別の話…医者を志しているクセに…イヴァン王太子は国王を救うコトしか考えていない」

「『ガルーダ王国』の国民にとって…父は必要な存在だから…」

「・・・君だって神戸社長にとって必要な人だ。君のお腹の中に居る赤ちゃんにとっても…」

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