期間限定マリアージュ～四年越しの旦那様はエリート社長、誓いのキスが子作りの合図～

「弘瀬お前は知っていたか？」

俺はコーヒーを淹れ、給湯室から出て来た弘瀬に問いかけた。
「いえ」

弘瀬は俺達にコーヒーを供し、首を横に振った。

「本当に知らないのか？」
弘瀬の父親は父の秘書だった男。
父の自殺後は直ぐに定年退職して、今は隠居生活を送っていた。

「父からは何も訊いておりません」

俺の父に口止めされたのか…

「浩明さんは何も訊いていなかったんですか？」

「はい…父からは何も訊いておりません…申し訳御座いません」

「そろそろ…貴方の父親からは頂いたお金が底を尽きそうなので、相談に伺いました」

「・・・」
「我が家には麻莉を除き、四人の子供たちが居まして…私の会社は親会社の煽りを受けて倒産…貴方の父親がその負債の肩代わりと我が家族の生活の面倒をずっと見てくださいました…我が家族にとっては非常に有難い存在です」


私は佐久間さんの話でようやく父が横領した会社のお金の行く先を理解した。
父は佐久間さんに横領した金を渡していたんだと。

「負債は幾らですか？」

「四億五千万円です・・・」

「生活費として渡したお金は…見積もりで結構です…」

「・・・三千万円の家もローンも一括で支払えたので・・・ザッと七千万円でしょうか」