セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
花那はさっきの医師と看護師の話をゆっくりと思い出す。彼女はまだ信じられないでいたが、身体のあちこちが痛むので事故にあったことは事実なんだと納得した。
それでも、まだすべてを受け入れることが出来るわけもなく花那は頭を抱えた。
「夫? 私の……いつの間に結婚なんて」
今の花那は結婚前の二十三歳の状態で、記憶が正しければ長く付き合って結婚まで考えていた相手に酷いフラれ方をしたばかりのはずだった。
——もしかして、康平は私とヨリを戻したの?
花那とは全く違うタイプの女性に引かれてしまった康平、彼は今さらどんな言葉で自分と結婚するように説得したというのか?
信じられない気持ちでいっぱいだった花那に、隣のベッドから未稀少年が声をかけてきた。
「ねえ。あのオジサンでしょ、今からお姉ちゃんに会いに来る人って」
「未稀君は知ってるの? その男性がどんな人なのか」
オジサン? 花那は少年の言葉に首を傾げた。康平は高校で出会った同い年の男で、まだオジサンと呼ばれるような年齢ではないはず。
自分がどれだけの記憶を失っているのか、まだ分からない花那は余計に混乱してしまう。
「知ってるよ、ほとんど毎日来ているからね。いつもムスッとしてて、僕は苦手だけど」
「そう、なんだ……」
花那は未稀に笑顔を見せながらも、手が震えている事に気付いていた。
——康平は誰にでも笑顔で接していたし、とても子供が好きだった。そんなムスッとした態度なんて取るわけがない。
では自分の夫というのは誰なのか、全く見当も付かないままの花那に病室の外から声をかけてきた。
「深澤さーん、旦那様いらっしゃいましたよー」