セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
——誰、あの人?
看護師の後ろに花を持って立っている男性、もしやあの人が自分の夫だというのだろうか? ここから見ただけでも分かった、彼は花那の恋人だった康介ではない。
スラリと背は高いが、決してナヨナヨした感じはしない。姿勢よくこちらに向かって歩いてくる男性はとても綺麗な顔をしている。
「花那、やっと目を覚ましてくれたのか」
——本当にこの人が私の旦那さん? 全然知らない人なんだけど。
だけどその声は聞き覚えがある、何度も夢で花那の事を呼んだ声だった。戸惑いながらも花那が顔を上げると、男性は持っていた花を彼女に差し出した。
男のその行動に花那はしばらく考えて、こう言った。
「ありがとうございます。でも、私動けないんですけど……」
ベッドの上、少しでも体を動かそうとすれば強い痛みに襲われる。こんな状態で花を渡されてもどうしようもないのだ。
すると男性はすぐに手を伸ばし、彼女に渡した花束をまた自分の手の中に戻す。
「すまない、花那が目を覚ましたと聞いてまだ動揺していて。これは俺が花瓶に挿してこよう」
それだけ言うと男は花那の返事も待たず、さっさと病室から出て行ってしまった。
「ほらね、ムスッとしたオジサンでしょ?」
二人の様子を黙ってみていた未稀が、戸惑っている花那に話しかける。確かにムスッとしていたし、花那よりだいぶ年上だったようにも見えた。
しかし……
——そんなに悪い人じゃなさそうに見えたわ。
花那は未稀の言葉を聞きながらも、自分の夫だという男にそんな感想を抱いていた。