セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
一瞬で変わる距離に
「本当だわ、すごく美味しい……」
スプーンで掬ったトロトロの卵とチキンライス、それにコクのあるデミグラスソースの相性は抜群だった。
思わず頬を抑えてしまった花那を、颯真は満足そうな顔で見つめていた。
さっきの出来事で気まずくなるかもしれないと花那は思ったが、颯真はあの事の後は何事も無かったように振舞ってくれている。
思わず彼に甘えてしまった、自分の弱いところを見せてしまった。そう反省しそうになった花那を、颯真は「頼ってくれて嬉しい」と優しい言葉で包んでくれた。
「そうだろ? ここはシェフが材料にも手順にもこだわってるんだそうだ、想像よりずっと美味しいオムライスが食べられて俺も嬉しい」
そう言ってオムライスを口に運ぶ颯真はいつもより子供っぽいような気もする。そんな彼を見れるのだから、より美味しく感じることが出来そうな気がしていた。
夢中で食べる颯真の頬についたデミグラスソース、気が付いた花那は紙ナプキンを一枚とって彼の頬に手を伸ばす。
「颯真さん、ついてる……」
「ああ、すまない。ついがっついてしまって」
丁寧にソースを拭うとその手を颯真に握られる、驚いた花那が思わず手を引っ込めようと力を入れると……
「あ、驚かせてしまったか? ただ紙ナプキンを貰おうと思っただけなんだが」
「そうだったの、ごめんなさい。大げさな反応をしてしまって」
まだどこかお互い緊張して遠慮がちな部分は残っている、そんな花那に颯真はもう少し心を開いてくれたらと望みたくなる。
記憶の無い彼女に無理は言えない、だがもどかしさはいつも感じていた。