セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「オムライスすごく美味しかったし、デザートのムースもサッパリしていて好みの味だったわ。連れてきてくれてありがとう」
店を出ると花那は柔らかく微笑みながら颯真を見上げる。すると颯真は珍しくテレたような顔をしてみせて……
「いや、花那は俺の我儘を聞いてついて来てくれたんだ。こっちがお礼を言うべきなんだが、喜んでくれて良かった」
颯真は視線を斜めに向けながらもそう言うと、花那の手をそっと握って彼女の隣に立つ。そこが自分の立つ位置なのだと彼女に伝えるように。
そんな颯真を花那は愛おしく思う気持ちを抑えるので必死だった。今の自分を見て、寄り添おうとしてくれるそんな颯真の気持ちが少しずつ伝わってくるようで……
「せっかくだから駅の方も少し見に行こうか? 今の時期なら少しはイルミネーションの準備が始まっているかもしれない」
「そうね、もうそんな時期になるのね……」
花那が記憶を失ったのは夏の終わり、いつの間にか数か月が過ぎ季節は冬へと変わろうとしていた。
記憶が戻る事に怯えながらの毎日だったが、颯真と花那の関係は以前よりずっと良いものに変わっている。
――ずっとこのままでもいいのに。
それは颯真と花那、二人が言葉に出来ない願いであったのかもしれない。