セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
だがそんな訳にはいかないことは二人とも分かってた。
颯真は花那が記憶を取り戻したがっていると思っているし、花那は颯真が以前の自分に戻って欲しがっていると考えている。
どちらも本音が話せないでいる上に、相手に大きな隠し事をしたまま生きていけるほど器用でもなかった。
それならせめて今だけでも幸せだと思って過ごしたい。そんな気持ちで二人の時間を大切にしようとするしかない。
「ほら、少しだけど駅前はイルミネーションで彩られている。こらからもっと綺麗になるんだろうな」
「そうね、クリスマスの頃にまた来たいかも。さすがに無理かしら……?」
二人で眺めるイルミネーションは派手ではなくても十分綺麗だった。もう少しだけ颯真との時間を望む花那の言葉に、彼も静かに頷いて……
「来れるさ、クリスマスまであと少しなんだ。きっとまた二人で見に来るんだよ」
その言葉に花那は嬉しくて颯真と繋いでいた手に力を入れる。そのままそっと颯真の肩に頭を寄せようとした、その時。
「……あ、あの子。ちょっと危ないから見てくるわ」
二人のいる場所から百メートルほど先にある喫茶店の前。まだ幼い子がウロウロしている事に花那は気が付き、それだけ言うと颯真から離れていく。
そんな彼女の後姿を見つめていると、颯真は一瞬あの日のことを思い出した。