セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「ごめんなさい、颯真さん。私、また迷惑をかけてしまって……」
震える声でそう言った花那だったが、一瞬だけ颯真から目を逸らしたことを彼は見逃さなかった。
だが、颯真にはそれを確かめる勇気は出せなかった。知らないままで気付かないままでいれば、花那とのこれまでの関係を続けられる……そんな狡さが心の中にあったからかもしれない。
「いいんだ、無理をしなくても。すぐに帰ってゆっくり休もう」
花那が助けた子供は、すでに親が駆け付けて必死で抱きしめている。一言くらいは言ってやりたい気持ちがあったが、今は花那を優先したいと颯真は考えたのだ。
車を停めたパーキングまではまだ距離がある、颯真はタクシーに乗り込み花那に寄り添うように肩を抱いた。
――何があっても、もう彼女を手放す事なんて出来ない。記憶なんてあっても無くてもこの気持ちは変わらない、それを早く伝えなければ。
颯真の中の焦りを、この時の花那がどう感じていたのか。瞳を閉じたまま俯き震える花那の心の内は颯真には知ることは出来なかった。
パーキングへ着くとタクシーを降り、会計を済ませた颯真は花那を車の助手席へと座らせる。車を発進し自宅へと向かう時間、来た時とは違いどこか気まずい沈黙が二人を包んでいた。