セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「本当に大丈夫か? 心配だから今夜一晩は同じ部屋で眠った方が……」
颯真は医師である自分が同じ部屋で休んだ方が良いと何度も言うが、花那は首を縦には降らなかった。強く拒絶するような態度はとらないが、花那はやんわりと颯真の申し出を断り続ける。
そんな彼女の態度に不安になりながらも、颯真はそれ以上何も出来ないままでいた。
――今花那から離れたら、彼女はもう俺をちゃんと見てくれないような気がする。
自分の部屋へと一人入っていく花那の後姿を見つめながら、颯真はどうしようもないジレンマを感じていた。ただそれを洗い流したい気持ちで自分もバスルームへと向かっていく。
たった数時間前はもっと相手を分かりあいたいと思うほどお互いの距離が近づいたのに、まるで全て夢を見ていた気分だった。
そんな颯真と別れた後、花那は常夜灯だけを付けた部屋のベッドに座って俯いていた。その手は固く握られ小さく震えている。
「どうして……?」
たくさんの疑問、それと共に浮かぶのは以前は見たことも無かった颯真の色んな表情だ。経った時間は数か月のはずなのに、花那と颯真の距離は信じられないほど近づいて……
「私は、どうすればいいの……?」
すすり泣くような弱弱しい花那の声。
まるで二人共が、同じ場所で互いの本音を見つけられず迷子になったようだった……