セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
けれど颯真の口から花那のことや二人の結婚生活については何も語られない。よく考えてみれば花那を心配するような言葉の一つもなかった。
少なくとも普通は妻が事故にあって目覚めた場合、もっと感情的になるのではないだろうか?
——颯真さんは私が目を覚まして、喜んでいるようには見えなかったわ。
記憶喪失だという事はすでに颯真には話をしてあると聞いた。だがそれでもこんな反応になるとは思えない。
もしかしてすでに夫婦関係が冷えていたのかもしれない、花那はそう考えて少し悲しい気持ちになった。ベッドに横になったままそっと颯真から顔を背けてシーツを握りしめる。
「花那? もしかして具合が悪いのか、看護師を呼んでこようか?」
そうやって心配してくれる颯真の声音はとても優しい。とても関係が冷えた妻に対するものとは思えないのに。
今までの事が分からない不安、これから先どうしていいのかも花那の心を不安定にさせた。そんな彼女が思いついたこと、それは……
「あの、母は? 私は母と話をしたいんですが……」
病気で身体も心も弱い母はきっと花那の事を心配しているだろう。それに今回の事を話して少しの間、母のもとに身を寄せた方が良いのかもしれない。
そう考えた花那は颯真に母との連絡を取りたいと頼んだのだが……
「亡くなったよ、君のお母さんは。ちょうど二年前に」
「え、うそ……?」