セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
意外とマメなのか、彼はいつも花が萎れてしまう前には新しい花を持って帰ってくる。良く見てくれているのかと思えば、それ以外の事は適当だったりと颯真さんには驚かされるばかりで。
よほど花が好きなのかと思い名前や花言葉を知らないかと尋ねたところ、彼は困ったように「知らない」とだけ答えたこともあった。
「いつも思うけれど、颯真さんと綺麗な花束ってミスマッチよね。ふふ」
毎日皺一つないスーツ姿で仕事に行く彼は、帰ってきても疲れさえ感じさせないほどキチンとしている。そのうえ不愛想な表情の颯真さんに、可愛いピンクや黄色の花たちは浮いて見えるのだ。
貰った花を生け終えてのんびり眺めていると、颯真さんが自室から出て廊下を歩いてくる。私と目が合うと気まずそうに目を逸らす彼を不思議に思いながら、私は彼の傍に寄った。
「見て、とても綺麗に飾れたの。いつも素敵なプレゼントをありがとう」
「別に、そんな花くらいで……」
颯真さんは照れているのか、こちらと視線を合わせないまま小さく呟いた。彼はそうお喋りな方ではないし、記憶を失った私にまだ戸惑っているのだと思う。
それでもこうやって気を使ってくれるだけで、私は嬉しかった。
「颯真さんにとってはそうでも、私にとっては素敵な贈り物よ? この花を選ぶ間は颯真さんが私の事を考えてくれてるって事だもの」
「君が……いや、俺が君に……」