セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「もう帰るんですか、颯真さん」
あれから一週間、颯真は毎日花那の見舞いにやってきた。着替えや入院生活に必要なもの、時間をつぶすための小説や週刊誌などを持って。
起き上がれない花那に、颯真は持ってきた花の水替えもしていた。
——颯真さんはいい旦那様、だと思うのだけど。何かが変な気がするわ。
持ってきてくれる着替えの服は全部新品で、それを見た花那は颯真にこう言った。
「私の使っていた服でいいですよ? わざわざ買わなくても、勿体ないですし」
颯真はしばらく黙っていたが、こんな時にお金のことは気にしなくていい。と返しただけだった。
出ていくつもりで花那は持っていたスーツケース以外の荷物は全て処分していた。それを颯真は花那に話すことが出来なかったのだ。
「ああ、今日はまた病院に行かなきゃならない。もしまた何か欲しいものがあればスマホにメッセージを送ってくれればいい」
「そうですか、分かりました」
数日前、颯真から渡されたスマホ。それは新しく契約されたもので、多分花那が持っていたはずのスマホではない気がしていた。
連絡先は登録されていたが、メッセージや通話記録は一切残っていなかった。
「……颯真さんっていったい何を考えてるんだろ?」
彼が花那の事をどう思っているのか、それも全く分からない。記憶が無いからだろうか、花那は颯真に愛情を持たれていると感じる事は無かった。