セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「だいぶ良くなってきましたね、もう少しで退院出来そうですよ」
診察をしていた医師は笑顔で花那に話す、きっと彼女が喜ぶと思って言っているのだろう。そんな医師に花那を小さく微笑んで見せると……
「そうですか、それは楽しみです。ありがとうございます」
そう言って頭を下げた。
本当は全く記憶にない結婚生活の方が、花那にとっては不安でしかない。夫である颯真は毎日のようにやってくるが、最近では会話もほとんどなくなっていた。
知りたいことを尋ねても、颯真は曖昧にしか答えない。颯真個人のことには何でも教えてくれるのに、花那のことや二人の今までについて聞こうとするとそそくさと帰ってしまう。
「退院できる日が決まったら、旦那さんにも報告しておいてね」
看護師も笑顔でそう言ってくれるのだが、やはり花那の心は複雑で。退院の時も誰か別の人に来てもらえないか、もうすこし入院を延ばせないかと考えた。
だが、記憶の曖昧な花那にすぐに連絡の取れるあいてはおらず……
——せめて記憶が戻るまで別に暮らすとか、出来ないのかしらね。
もちろんそんなこと無理だと思われる。
今現在、花那は仕事をしていないと聞いたし別居しても今の花那では生活出来るワケがない。颯真だってそんな妻の我儘にホイホイ金を出しはしないだろう。
花那は大きなため息をついてベッドに丸まった。
——どうして夫である颯真さんと一緒に暮らすことがこんなに憂鬱に感じるの?
その理由が、花那にはどうしてもわからないでいた。