セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「今日で離婚……? いったいどうして」
寝耳に水とはこの事だろうか、颯真は花那の言葉と凛とした態度にただ茫然とすることしか出来なかった。
それもそのはずで颯真は花那との結婚生活を自分たちなりに上手く出来ている、そう疑わず暮らしていたのだから。
「五年前の九月一日に、私達は契約結婚をしましたよね? あの時約束した五年が過ぎ、やっとお互い自由になれる時が来たんです」
「……五年、もう五年経つのか」
お互いに合わなければすぐ別居するなりする事も出来た、そうしなかったのは颯真が花那の待っていてくれる家が心地が良かったからだ。
だが颯真もそんな事を言葉にして彼女に伝えようとはしなかった。
「俺から離れたいのか、君は……」
「はい、これからは一人でしっかり地に足をつけて生きていこうと思ってます」
ショックを受けてもそんな様子を見せる事もなく淡々と花那の意見を聞く、颯真は生まれ育った環境からひどく諦めが早かった。
そして花那も離婚しお互いが自由になる事で二人とも幸せになれると疑わない。
「そうか。それじゃあ花那の好きにするといい。すぐに離婚届に署名してこよう」
自室へと離婚届を持っていく颯真の後姿を、花那は複雑な気持ちで見つめていた。
——あの人が止めてくれるわけもないのに、いったい何を期待していたのかしら? 私なんてしょせん期限付きの契約妻でしかないのに。
すぐに部屋から戻ってきた颯真にきちんと記入欄を埋められた離婚届を彼女は手渡される。その行動に何の迷いも感じられない、そう思った花那は彼から離婚届を受け取ると黙って部屋を出た。