セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
颯真と結婚をした記憶が無ければ、その出会いや恋をしたことも全く覚えていない。それを知っているはずの颯真に尋ねても、彼はいつもその話をはぐらかしてしまう。
ここにだって花那の持ち物らしいものは見当たらず、颯真が買ってきた服や小物しかない。どこを探してみても花那好みの物は一つも有りはしなかった。
「……よほど花が好きなのかしら?」
出窓に飾られているのは綺麗な蘭の花。花那は派手なのは苦手だったが、明るい気持ちになれる明るい色の花を好んでいた。
それでもどこか冷たそうなイメージの颯真に花は似合わない気がする。ならば彼の言っていた使用人が用意してくれていたのか。
花那は着替えを済ませて、ベッドに腰掛ける。ここで自分が五年どんなふうに暮らしてきたのか、これから先颯真と上手くやっていけるのか。
「そう言えば、私……」
颯真と結婚していると聞いて、一つ疑問だったことがある。この部屋をどれだけ探してみても、少ない荷物を何度ひっくり返してみても……
「どうして、颯真さんとの結婚指輪が無いの?」
颯真の左手の薬指には間違いなくプラチナのリングが付けられていた。なのに花那の左手にもあるはずのリングが見つからない。
その事について颯真は何も言おうとはしない。
「分からないことだらけよ、颯真さん……」