セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「いいえ、一人で大丈夫よ。それに颯真さんは忙しいでしょう……?」
何となく一人の方が良いとは言えず、花那は当り障りのない言葉を選んだつもりだった。
しかし颯真はそんな花那にの言葉にムキになったかのように、彼女の手首を掴むと廊下を玄関に向かって歩き出す。
「ちょっと、颯真さん? どうして」
「俺は別に忙しくない。今日は君の退院の日だ、そんな日は休みくらいとっている」
そう言うわりには不機嫌さを隠そうともしない、颯真のそんなところに花那は戸惑うしかなかった。
一度バッグを取ってくると部屋に戻り、鏡で今の姿を確認する。颯真の選んでくれた服は自分の好みとは少し違う、そんな事を考えながら花那は小走りで玄関へ。
「ごめんなさい、待たせてしまって」
「そんなに走ってこなくていい、君の身体はまだ本調子ではないのだから」
ちょっとした言葉一つで不機嫌になったかと思えば、花那のそんな行動を見て心配する。花那には颯真の本質が全く分からない。
——記憶が亡くなる前の私だったら、もっと颯真さんの事を理解出来ていたのかしら?
今そんな事を考えても無駄だという事は花那もちゃんと分っている。
しかし彼女の不安の一つに花那に対して颯真が冷たいのは、記憶を失った所為なのではないかと感じていたからだった。