セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「あの、私が好んで行っていた場所とか知りませんか? 出来ればそういう所に連れて行ってもらいたいんだけど」
「……花那の、それはどうして?」
花那の問いに颯真は少し考えたようなそぶりを見せ、逆にその理由を聞いてくる。何もないような表情で返事を返したが、実は颯真は焦っていたのだった。
「どうしてって、思い出の場所を見れば何か思い出すきっかけになるかもしれないでしょう? ずっと記憶を失ったままには出来ないし……」
もし颯真が記憶の無い妻を愛せないで冷たい態度をとってしまうのならば、少しでも早く彼のために記憶を取り戻してやりたいと花那は思っていた。
その方が花那の為にもなる、誰よりも愛した人はずの人を思い出せるのだから。
彼女はそう思っていたのに……
「その必要はない。花那はまだ心も身体もしっかりと休むべき時期だ、記憶などそんな無理に思い出さなくていい」
「え? でも、それじゃ……」
花那は知らない、颯真が彼女の行きつけの場所など一つも知らない事を。そして……本当だったならば、二人はすでに夫婦ではなくなっていたことも。
「……花那が記憶が無くても、ここに居てくれればいいから」
ずっと傍にいて欲しい、そう思っていたのは颯真の本心だった。
だが彼はそんな五年間隠し続けた本音を、記憶を失くして何も覚えていない妻に伝えてしまったのだった。