セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
それでもこのまま帰るのはつまらないと、花那は無理を言って颯真に近くを案内してもらう。
記憶が無くても構わない、颯真はそういうが花那は同じ気持ちにはなれなかった。こんなぎこちない夫婦のままでは颯真を疲れさせてしまうはずだと。
「ここは色んな花が植えられていて、初めて花那とここにきた時は彼岸花が……」
「……そうなのね、ここに颯真さんと二人で」
颯真が嘘をついているとは思わない、けれどどれだけ記憶を手繰っても彼と二人で花を見た記憶など浮かんではこなかった。
けれど花那の記憶の奥、悲しげな雨の景色が映る。
「紫陽花が……」
「どうした、花那?」
「ここの紫陽花が、雨の降る日はとても綺麗なのよね」
川沿いに植えられた紫陽花、毎年なぜか雨に日にそれを見に来ていた。それも必ず花那が一人きりで……
映し出された記憶とともに蘇るのは、その時の切ない気持ち。決して満たされない何かを抱えているような。
「花那、何か思い出したのか……?」
戸惑う颯真に花那は静かに首を振る。過去の記憶というほどしっかりした思い出は浮かんでこなかった。ただ、この公園で自分が何を見てどんな感情を抱いていたのか。
——どうしてこんなに悲しい気持ちになるの?
花那はずっと記憶にない頃の結婚生活が颯真とともに満たされたものだと思っていた。しかしこの時に彼女は、颯真との結婚生活に小さな疑問を持つようになったのだった。