セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「夕飯の準備をするので、颯真さんは休んでいてください」
散歩を終えて帰ってきた花那は、少し早いが夕食の支度をはじめようと思った。
自分に与えられた部屋には時間を潰せるようなものはないし、掃除や洗濯も使用人が完璧に済ませている。
今自分に出来る事はこれくらいしか見つからなかった。
「本当にいいのか? 使用人に任せて花那はしっかりと身体を休めた方が……」
意外と心配性なのか、颯真は何度も花那に無理はしてないかと尋ねてくる。なぜ花那の事を気にかけてくれていることに、こんなにも違和感を感じるのか。
——記憶にはないけど、私は本当に颯真さんに愛されていたのよね?
記憶をなくしているからか、颯真は必要以上に花那に触れない。過去の話をしようとしないし、お互いの事も言いたがらない。
だが花那にはその理由が分からない。今の花那を妻として傍にいて欲しいというくせに、間違いなく彼は何かを隠してる。
「颯真さん、夕飯はいつも何時ごろに用意してたかしら?」
ある程度の準備が終わり、そろそろテーブルに並べても構わないだろうかと花那は声をかける。
「あ、ああ、今からで構わない。君が食べたい時間で……」
颯真は五年間の結婚生活で数回しか花那と食事をした覚えがない。仕事で忙しく食べれない日が多かったため、花那もそれで納得していた。
それなのに……
「じゃあ、今度からは食べれそうな時間にメッセージを送ってくれる? その時間に合わせて颯真さんのご飯を作っておくから」