セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


「美味いな、花那(かな)は料理が得意だったのか……」

「そんなことないわ、きっと食材が良いものばかりだったのよ。普段は母と自分のための質素なものばかりだし……」

 そう言いかけて花那は母が死んだと聞かされたことを思い出した。自室の机に飾ってあった母の遺影、それでもまだ亡くなったという実感は湧かない。
 花那のそんな様子に颯真(そうま)はどう彼女を励ませばいいのかと悩んだ。

 ――励ます? 彼女の母の葬儀の時だって、俺は優しい言葉一つかけられなかったのに?

 颯真は義母の死に何も感じなかったわけではない。だが特殊な環境で十分な愛情を受けずに育った颯真には、心に欠けているものがあった。
 それに気付いていながら、行動出来ずにいる自分を颯真は悩み続けている。

「そうか? 使用人の作る料理より温かく優しい味がする、俺はこの味が今までの中で一番好きだ」

 それでも今の彼女になら素直になることが出来る気がして、颯真は花那を喜ばせたり励ましたいと無意識に思っていた。

「それに、花那のお母さんだって……俺に話してくれるのは君の自慢話ばかりだったし」

 これは颯真がずっと秘密にしていたことだ、内緒にしてほしいと彼女の母が願ったから。
 約束を破ることを申し訳ないと思ったが、今は花那に元気になって欲しい。今の颯真の中でその気持ちが勝っていた。


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