セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
誕生日には思い出を
「今日の夜は外で食事をしないか……?」
颯真がそう言いだしたのは、二人での生活を再開してちょうど二週間後のことだった。
記憶の無いまま家事や交通事故の事に追われる花那を気遣って、颯真はなかなか言い出せなかったようだ。
「どうしたの? 夕飯ならいつものように私が……」
と言いかけて花那はふと考える。
もしかしたら颯真は自分が作るような庶民的な料理ばかりでは嫌なのかもしれない。それなら無理に作らず彼の言う通りにした方が良いのではないか、と。
「別に君の料理に飽きたとかじゃない。本人がすっかり忘れてるようだが、今日は花那の誕生日だろう。君を……連れていきたいレストランがある」
「誕生日……そう言えば、そうね」
事故にあって入院して、そのうえ記憶を失っていて颯真との結婚生活まで始まった。毎日が忙しく、やる事や考える事がたくさんで花那は自分の誕生日さえもすっかり忘れていた。
「花那の誕生日は毎年決まったレストランを予約していた、もちろん今年も……」
颯真は二人の結婚生活の終わりを考えていなかった、今年も二人でレストランで食事をするつもりでレストランを予約した。
花那から離婚を言い出されても予約を取り消さなかったのは、何故だか分からなかったが。
「私たちの思い出のレストラン……なの?」
「……事故にあう前の君が、あのレストランが一番好きだと言ったから」
颯真は二人の思い出があるとは言えなかった、レストランで過ごす二人の時間はいつも静かで最低限の会話しかなかった。
それでもこの日だけは、颯真も花那も二人一緒に過ごすのが当たり前のようになっていて……