セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「私は充分回復したし、今の生活も楽しませてもらってるわ。だけど、私が今一番に望んでることは記憶を取り戻すことなの。それでも駄目……?」
「どうしてそこまでして? 花那は今の俺との生活にそんなに不自由を感じているのか?」
颯真はそう言ったが、花那はそんな事は少しも思っていない。これは颯真が悪いわけでもなく、花那自身の問題なのだから。
――この優しい言葉をもらうのも、本当は今の私じゃないはずなのに……
颯真が花那に対して優しい態度を取るたびに、思いやりのある言葉を口にするたび花那は消えてしまった自分に申し訳なさを感じていた。
颯真は間違いなく自分の夫であるはずなのに、誰かの大切な人を奪ってしまっているかのように。
「私は怖くなってるの、このまま颯真さんの優しさや自分の立場に甘えてしまうことが。過去の自分を置き去りにして、私だけが大切にされているようで怖い」
今の花那の悩みを解決できるのは記憶を取り戻すのが一番なのかもしれない。花那は病院を退院してから、医師の紹介でカウンセリングを受けていた。
それでも、まだ花那の記憶は欠片も取り戻せない。何をやっても上手くいかない、そんな状況に彼女は焦っていた。
「……もし取り戻せた記憶が今の花那が望むようなものではないとしたら、その時に君はどうする?」
花那の思いに颯真は悩みながらも問いかける。花那の記憶が戻る、つまりそれは二人の関係の終わりを示している。
記憶を取り戻した彼女はもう一度、颯真の前から去っていくだけなのだから――――