セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「颯真さんは私の記憶が戻る事をあまり望んでいないように見える、どうして……?」
花那は颯真がその事に対して非協力的な事は気付いていた。いくら事故にあったとはいえ、相手の記憶が無い妻と暮らす方が不安なはずなのに……
花那が記憶を取り戻そうとするたびに、颯真はそれを止めようとする言葉を探しているように見えるのだ。
コンコンと花那の部屋をノックする音が聞こえる、彼女はベッドから起き上がり部屋のドアを開けた。
廊下に立っていた颯真の腕にサラリとした肌触りの良さそうな白い布……いや、よく見ればそれが服だと分かる。
「明日は、これを着ていくと良い。花那が良く着ていたワンピースだから」
「え? でも、どうして颯真さんが……?」
これが花那の服ならば、この部屋のクローゼットに入っていてもおかしくないはず。なのになぜそれを颯真が持っているのか?
しかし颯真は静かに首を振って答える事もせず、花那の頬に軽く触れそのまま彼女に背を向け歩いて行ってしまった。
「これが、私が好きだった服……?」
真っ白で柔らかなワンピースは小さな刺繍が施してあり、上品で可愛らしい。それでもまだ、花那の記憶は揺さぶられない。
花那はそのワンピースをハンガーにかけてしばらくの間眺めていた。