セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


花那(かな)、そろそろ行こうか?」

 そう優しく言うが、このデートに颯真(そうま)が乗り気でない事は態度で分かる。水族館が好みではないのか、それとも今の花那と出かける事に気が乗らないのか……
 けれど何もしなければ、花那の記憶だって戻る可能性は低くなる。そう思った花那は颯真の態度に気付かないふりをして荷物を持って玄関を出た。

 先に車の後部座席のドアを開け、花那は弁当の入ったバックを置いた。そう暑い季節でもないし、保冷材も入れているので昼までは問題ないだろう。
 そのドアを閉めて今度は助手席のドアを開くと、シートに腰を下ろしベルトを着けた。

「何を持ってきたんだ? 後部座席の荷物は随分大きいが」

「内緒にしておくわ、まだ颯真さんに喜んでもらえるか分からないから……」

 ――以前の私はデートの時に同じようにお弁当を作ったりしたのかしら? もっと二人の会話を楽しんだり、夫婦らしいデートを……?

 そう考えてみても上手く想像は出来ない。今の颯真は花那に対してよそよそしいし、彼に聞いた以前の花那のイメージも今の自分とは別人のようだったから。
 それでも何となく嫌な気分になって、軽く首を振り今まで考えていたことを無かったことにしようとした。

「……君も同じなんだな。花那はいつもそうやって、俺にはほとんど本音を話してくれなかった」

「……颯真さん?」


< 49 / 160 >

この作品をシェア

pagetop