セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
あの時の花那にはもうまともな判断力など残っていなかった。ただこのまま自分のことは二の次に借金と病気の母を支える事だけを考えて生きていくのか、それとも愛のない結婚と知りながら颯真の手を取るのか。
——あの時の私は迷わなかった。もしかしたら五年あれば何か変わるかもしれない、そんな期待もあったから。
花那は信号待ちの時間、そんな事を思い出していた。
颯真の手を取ったのは間違いなくお金のためだ、借金や医療費の支払いはもう花那の手には負えない状態だったから。
それでも嫌な顔一つせずに、颯真は花那の結婚相手として彼女の母親に挨拶までしてくれた。医療費も借金も全て支払い、贅沢な生活までさせてくれた。
——感謝してるのよ、もちろん。でも……
実際に結婚し二人で暮らしてみて気付いたのだ、花那には愛のない結婚など出来ないと。
颯真は夫としては優しかった。我儘を言えば聞いてくれたし、欲しいものはなんだって買い与えてくれた。
……しかし、それらは全て花那の寂しさを埋める事の出来るものではなく。
五年間の結婚生活で颯真は決して自室に花那を入れる事は無かったし、颯真が花那の部屋を訪れる事も無かった。
同じ時間を同じ部屋で過ごしても、お互いの指先すら触れる事などほとんどありはしない。そんな生活で、花那は心に決めたことがあった。
——五年の結婚生活が終わったら、すぐに颯真さんを解放してあげなければ。