セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
それきり颯真は黙ってしまい車のエンジンをかけると、左右の確認をして静かに車を発進させた。
何か言葉を返せばよかったのかもしれないが、記憶の無い部分に触れられると花那は何も言えなくなる。以前と同じなのか同じじゃないのかなんて、今の花那にだって分かるはずもなく。
――颯真さんが私に何を望んでいるのかが分からなくて、彼に対する答えが見つからない。少し近付いたかと思うと、この人はすぐ遠くなってしまう。
以前の花那が颯真に本音を話さなかったという事は、記憶のあるなし関係なく颯真との夫婦関係はこんなに冷えたものだったのだろう。
花那は胸の奥がツキンと痛むのを感じた。この胸の痛みは今の花那のものなのか、それともこの心の奥で眠っている花那のものだろうか……?
――これ以上は知らないままでいた方が良いのかもしれない。だけど、それじゃあ……
そんな考えが花那の頭をよぎった、そんな時。
「……すまなかった。記憶の無い君をせめても仕方ないのに、キツイ言い方をしてしまった」
「颯真さん……」
こんな風に謝られては花那は怒る事など出来ない。どこかで颯真は優しい男だと、信頼していい人間だと本能で感じてる。
この一言でもっと颯真の事が知りたいと、分かりあいたいという花那の気持ちが抑えられなくなる。