セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「美味しい、この味なんとなくだけど覚えてる……」
「そうか、花那は意外と食いしん坊なのかもな。好きだった食べ物や飲み物はちゃんと覚えてるんだから」
颯真の言葉に花那は少し拗ねた顔をしてみせるが、本当のことなので仕方ない。
彼に連れて行ってもらったレストランは花那の好みの味だったし、渡されたカフェオレには懐かしさを感じる。
失くしたはずの自分が、所々で自己主張でもしているみたいに。
「美味しい食べ物も飲み物も大好きですよ。父の事があってからは、質素な生活を余儀なくされましたから」
「そう、だったな。出会った時の君も俺にそう話してくれた」
颯真の言い方だと花那は出会ってすぐに自分の置かれた境遇を話したようにも聞こえる。彼女は普段誰かにそんな話をする性格ではない、そんな引っかかりを感じながらも会話を続けた。
「そうなんです。父は借金を残して亡くなり、母は病気で入退院を繰り返す生活。毎日必死で働いてもお金に余裕が無くて……あれ?」
ふと花那はある事に気が付いた。母が亡くなったことはきちんと話を聞いて納得出来た、ではもう一つのアレはどうなったのか?
「どうした、花那?」
「颯真さん、私の父が残した借金ってどうなっているのか知りませんか?」