セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「それなら完済してるよ、もう五年も前に」
「五年も前に、払い終わっているって? どうして、そんな大金を私が払えるわけないのに……」
颯真の顔はいつもと変わらない、彼は当然のことのように話しているが花那にとってはそうではなかった。
花那がいくら働いてもほとんど減る事の無かった多額の借金、それを誰が支払ったというのか? それでも思い当たる人物は一人しかいない。
「……俺が払ったよ、花那と籍を入れたその日にね」
「なっ! どうしてそんな事を! 颯真さんには何の関係もない借金なのに」
颯真には花那の借金を肩代わりした理由があった、しかしそのわけを今の花那は覚えてはいない。
だが颯真はまだお互いの結婚が契約で結ばれただけのものだという事を、記憶の無い花那に伝える気はなかった。
「その話は帰ってからにしないか? 今日はデートなんだ、気の重くなるような話はしたくない」
そう言われれば花那はそれ以上、颯真を問い詰めることは出来なくなる。
彼の言う通りデートに気が重くなる話題を持ち込むのは良くないし、颯真はきちんと後で話すと言ってくれている。
「そうね、ならばその話は家に帰ってからにでも……」
花那は小さな声でそういうと、俯いて颯真の買ってきたカフェオレの容器を見つめていた。
ゆらゆらと揺れる液体が、まるで花那の不安定な心を映しているかのようだった。