セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


「思ってたよりも混んでないみたいだな。花那(かな)、降りようか」

「ええ、そうね」

 警備員に案内された第二駐車場に車を停めて、水族館の入り口まで歩く。デートだというのに颯真(そうま)から花那の手を取る事も無ければ、花那から颯真に寄り添う事もしない。
 
 ――周りの人から見たら私たちはどんな風に映っているのかしらね? 

 仲良さげな夫婦にはとても見えないだろう、初々しい恋人同士にでも見えればよいが、嫌々一緒に来ている破局寸前のカップルにでも見えはしないかと不安になる。
 もう少し颯真の方から何か行動してくれればいいのに、と花那は何度も思った。
 強引でないところが颯真の良さだが、受け身の花那はもっと引っ張って行って欲しいとも感じている。

 自分から手を繋ごうと言ってもいいのか、花那がそう悩んでいるように実は颯真も同じように考えていた。
 今まで契約という形の結婚で、颯真は花那に必要以上に触れないように気を使ってきた。
 だが花那は記憶をなくし、契約の期間は過ぎている。普通の夫婦のように花那に接していいのかが颯真には分からない。

 少しだけ近寄って声をかけよう、そう思った花那は颯真との距離を詰める。早歩きで彼に近づいた花那の手が、颯真の手に軽く触れて……
 
 ――い、今しかないかも!

 そう思った花那は颯真の手に自分の手のひらをそっと重ねてみる。一瞬だけ颯真の手が動いたが、すぐにその大きな手は花那の手を握り返してくれたのだった。


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