セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「颯真さん、次は何を見る? 右奥の水槽には……」
花那がそう言いかけるが、颯真は腕時計で時間を確認すると首を振ってみせる。そして水族館のパンフレットを広げると……
「そろそろイルカのショーの時間だ、今日は土曜だし混むだろう。早めに行っておいた方が良い」
颯真にそう言われて花那もスマホで時間を確認した。はしゃいで見て回っているうちに随分時間が経っていた事に気付く。
慌ててパンフレットを覗き込みイルカのショーのあるプールの場所を探すと、花那はまた颯真の手を握って歩き出そうとする。
そんな彼女に颯真は……
「今度は花那が俺についてくる番だろ?」
そう言って花那の手を握り返すと、今度は颯真が先に歩き出す。さっきまで自分が颯真の手を握っていたことを意識していなかった花那は、見る見るうちに顔を赤く染めていく。
恥ずかしい気持ちもあるが、颯真に手を繋がれたことが嬉しくもあった。
慣れない行為なのか、颯真が花那の手を握る仕草はどこかぎこちない。魅力的な外見をしている男が、意外と可愛らしい事に気付いて花那はもっと嬉しくなる。
――今の私の事も、颯真さんがちゃんと見てくれるといいのに。
そう望みたくなるくらい、颯真に対して好意を抱き始める花那だがすぐに首を振る。きっと颯真が望んでいるのは五年間共に暮らした花那のはずだ。
早く記憶を取り戻すことが、きっと颯真のためになるはずだ、と。
逆に颯真自身は、花那が記憶を取り戻すことに怯えているとも知らずに……