セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「やっぱり今の私とでは、颯真さんも楽しめないのかしら……」
颯真と一緒に居ても自分ばかりがはしゃいで楽しんでいるように思えてくる。花那は少しでも颯真に喜んでもらおうとするが上手くいってないように感じていた。
過去の自分なら颯真を喜ばせれたのか、そんな事ばかりが頭の中をぐるぐる回る。
それでも今の花那に対しても颯真は優しくしようと努力してくれているのはよく分かっていた。
渡されたドリンクだって花那が好みそうなものだったし、イルカのプールの水で濡れないようにと上着も貸してくれる。
だが、花那はそんな颯真に自分は甘えてばかりなのではないかと考え始めていた。
結局イルカのショーが終わるまで颯真は花那の所に戻ってくることはなく、彼女の隣の席にはまだ幼い姉妹に座ってもらった。
ぞろぞろと観客が出ていく中、花那はまだ席に座ったまま動けないでいた。颯真はお手洗いに行くと言っていたから、出ていけばすぐに見つかるだろう。
そう分かっていても、まだ動けない。もし自分が嫌で離れたのだとしたら、なるべく遅くに言った方が良い、と言い訳をして。
しかし、本当の花那の気持ちは……
――ここに、ちゃんと戻ってきて欲しい。ここで待っている私の所に、颯真さんの方から。
自分ばかりがこうして欲しいと望んでばかりでは駄目だとちゃんと分かっているのに、花那はその場から動けないままだった。
「――花那!」