セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「すまない、変な事を言ったな。君は気にしなくていい」
花那の沈黙を悪い意味に取ったのか、颯真は少し困ったような顔でそう言った。
花那はそうではないと言いたかったが、簡単に口にしていいとは思えず黙っていることしか出来ない。
――過去を無くしているからこそ、颯真さんに何と答えればいいのか分からない。
花那だって颯真と過ごす時間は嫌なものではない、記憶をなくしても優しく気を使ってくれる夫の存在は頼りになり安心できるものだった。
それでも花那はここは本当の自分の居場所ではないと、あるべき記憶を取り戻さなければならないと考えてしまう。
それが日を追うごとに辛くなっていくのはなぜなのか……
「花那? 本当に嫌だったのなら言って欲しい、俺は君に無理して欲しい訳じゃないから」
「そうじゃないんです、ちょっと驚いて……」
無理なんてしていない。颯真の好意を素直に受け取り、花那も同じような気持ちになると言えればどんなにいいかと思っていた。
――私が感じていることを素直に颯真さんに話したら、彼はどんな反応をするのかしら?
聞きたい、でも今の花那にそれを聞く勇気はない。結局また二人黙ったまま残りのデザートを口に運ぶだけになってしまった。