セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「忘れ物はないか? 昨日遅くまで起きていたようだから、しっかり確認しておいたほうがいい」
まるで過保護な父のように颯真は花那の世話を焼く。水族館に行った後くらいからか、花那に対しての颯真の態度が随分変わってきたように感じていた。
それが嫌だとは思えないから、花那もついそのままにしておいたのだが……
「大丈夫よ、颯真さん。私だって子供じゃないんだから、そんなに心配しなくても平気よ?」
記憶を失って初めて会った頃はもっと無関心な夫だったのに、同じ時間を過ごすうちに颯真との関係はどんどん変化していく。
それは颯真も同じように感じていて、今の二人の距離に心地良さと少しのもどかしさを抱えていた。
「心配するのは夫として当然のことだ、君は放っておくと無理ばかりするからな」
少し前に体調を壊して倒れかけた日があったためか、颯真はそれから口煩くなってしまった。しかしそれも女性特有の日だったため、花那も颯真に言い出しにくかっただけなのだが。
それでも結局颯真の前で貧血で倒れかけ、心配をかけてしまった。
「だからあの日はたまたまで、普段は全然平気なのよ。もう無理はしないって約束したし……」
あの日、倒れた花那を心配した颯真に次からはちゃんと辛い時にはちゃんと伝えると約束させられた。もちろん花那もその約束を破るつもりもなかった。
「分かってるならいい、じゃあ助手席に乗って。その荷物は俺が後部座席に乗せるから」
花那が運ぼうとした荷物はすべて颯真に奪い取られ、さっさと助手席に追いやられる。
それも不器用な彼の優しさだと分かるようになった花那は、胸がくすぐったくなってしまい勝手に緩んでしまう口元を颯真から隠していた。