セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】


 分からない事はそれだけじゃない、今の花那(かな)の身体はあちこち傷だらけで打撲の痕もいくつもある。身に着けている病院着で見えないとこも、さっきからズキズキと痛んでいた。
 余程のことが無ければこんな事にはならないはずなのに、花那にはそれが思い出すことが出来ない。

「あの、私はどうして……? いったい何があったんですか?」

「……もしかして事故の事を覚えて無いんですか、深澤(ふかさわ)さん?」

 花那は深澤なんて名前は知らない、彼女の覚えている名前は……

「深澤ではありません。私の名前は西庄(さいじょう) 花那です」

 戸惑う花那に医師は丁寧に話を聞いてくれ、事故による一時的な記憶障害だろうと説明してくれた。

「何かあったらすぐにナースコールを押してね、自分で押せなければ隣の未稀君に頼んでいいから」

 年配のナースはそう言うと、隣のベッドで本を読んでいた少年に手を振った。先ほどの彼が未稀君というらしい。
 花那は優しそうな未稀君の顔のホッとするが、今の状況は不安だらけでとても落ち着けそうにない。

「それと、もうすぐ旦那さんがこっちに来られると思うから。それまで休んでて」

 忙しそうに病室を出ていくナースの後姿を見つめて、花那は茫然と呟いた。

「旦那さまって……え、誰?」


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