セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「ほら、出来た。やっぱり君に良く似合う」
耳朶に触れていた颯真の手が離れ、彼は少しだけ後ろに下がるとイヤリングをつけた花那を見て笑う。そんな颯真の優しい微笑みに花那は胸がいっぱいになるようだった。
――こんな優しい笑みを私に向けてくれる、颯真さんの瞳に映っているのは今の私で間違ってないわよね?
颯真の傍にいると、嬉しさと不安が必ずセットになっている。自分を見て欲しいのにそう望むのは間違っている気がして、花那は心の中に気持ちを隠すしかない。
――記憶さえ戻らなければ、私たちが本当の夫婦になれるかもしれないのに……
まるで過去の自分がライバルのようにさえ感じてしまい、花那は余計に自分がどうするべきか迷ってしまう。それは颯真も同じ気持ちだと知らないままで。
「……花那、どうかしたのか?」
俯いた花那を心配して颯真が声をかけてくる。花那は慌てて顔を上げ「とても嬉しい」と、颯真に礼を言った。上手く笑えているだろうかと、少しだけ不安になりながら。
「もう帰ろうか、今日は何だか君とゆっくり話がしたい気分なんだ」
「ええ、私もそうかも」
支払いを済ませた颯真は当然のように花那の手を握り店を出る。もう少しだけこの手を離したくない、そう花那は心の中で祈っていた。