セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「してるよ、花那に大きな隠し事。だけどそれは君のせいだからじゃない、俺に勇気がないせいだ」
身体と視線はこうして向き合っているのに、まだ心の部分ではそうなることが出来ない。勇気がないと颯真は言ったが、それは花那だって同じことだった。
少しずつ育ってしまう彼への感情を伝えられず、その胸の奥に隠したままにしているしかない。
「勇気がない事がすべて悪いとは思わないわ、誰だって今が壊れるのは怖いもの……」
もし花那がこの想いを伝えれば、きっと颯真との穏やかな今の関係ではいられなくなる。以前の花那を望む彼が戸惑い悩んで、自分を拒絶したとしたら?
……そんなのは嫌、考えるだけで花那は怖くて仕方がなかった。
「……ああ、俺もそう思う。そうしなければ前に進めないって分かっていても、もう少し今が続いて欲しい」
「颯真さん、それって……?」
颯真がどんな気持ちでそんな事を言うのか、花那はもう少しだけ彼の心を知りたいと思った。てっきり花那の記憶を取り戻すために、颯真は行動していると考えていた。
それなのに彼は今が続いて欲しい、と。
もしかして颯真は今こうして目の前にいる自分との時間をそう言ってくれているのだろうかと、花那は期待しそうになる。