セカンドマリッジリング【コミカライズ原作】
「……言葉の通りだ、今の君にそう伝えてもいいのか分からないけれど」
颯真がそう望んでいても花那の気持ちが同じだとは限らない、彼女が記憶を取り戻したがっていると思っている颯真はそれ以上ハッキリと言葉にする事は出来ずにいた。
それでも花那には十分すぎるほど嬉しい一言で、すぐに自分もそうなのだと応えたかった。しかし戻るかもしれない記憶の事を考えると、それは口には出せなくて。
きっと颯真も同じことを考えて、それ以上は言葉にしないのだと考えた花那は……
「そうね、本当に伝えるべき相手はいったい誰なのかしらね……?」
「花那……?」
二人の距離が縮まり始めた理由は記憶が無くなった事なのに、もっとお互いが近づこうとするのを阻むのも失った記憶だった。
お互いが本音を出せないまま、沈黙のまま時間だけが過ぎ……そして、先に動いたのは颯真だった。
「それでも俺は今の君と、二人で出かけたいと思う。君が同じように思ってくれているなら、今度の休みは空けておいてくれ」
それだけ言うと、颯真は静かにリビングを出て自分の部屋へと戻っていく。
「今の私と二人で……」
残された花那はそのままソファーに腰を下ろし、しばらく何かを考えるように静かに床を見つめていた。