【短編】桜
朝。
ガタンゴトンと規則正しい音と共に
電車が揺れる。
いつもなら、ふわーっと欠伸が出てしまうような
この揺れも今日は少し愛おしく感じる。
今日は卒業式。
3年間の電車通学はこれが最後だ。
車掌さんが言う駅の名前を1駅1駅、
噛みしめながら聞く。
“桜坂〜桜坂でございます”
今呼ばれた駅。桜坂駅。
私は同じ車両の真ん中のドアに視線を移す。
ゆっくりとドアが開き、
寝癖がついた茶髪の男の子が乗ってきた。
彼は私を見つけると、にこっと笑って
私の隣に座った。
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