【短編】桜

「おはよ、未央奈(みおな)」
「おはよう、翔(かける)。
卒業式なのにいつも通りの寝癖じゃん」
「めんどくさくて」
「翔らしい」


橋本 翔。
私の好きな人。


入学式の日に電車の中で見かけて、
一瞬で恋に落ちた。

周りの人が携帯の画面を眺めているなか
翔は本を読んでいた。
たったそれだけなのに目が離せなかった。
周りの景色なんか目に入らないくらい。


その後奇跡的に同じクラスになり、
翔の名字、橋本と私の名字、畑(はた)で席も前後で
仲良くなるのに時間はあまりかからなかった。

友達からは付き合ってるのかと聞かれることもあったけれど、
私から告白する勇気なんてないまま
3年間片想い。

でも今日こそはちゃんと。
ちゃんと“好き”って伝えるって決めた。
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