【短編】桜
学校の最寄り駅までは後4駅。
時間にすると後12分。
きっと今しかない。
すうっと息を吸う。
少しだけ空いた窓の隙間から入ってくる風が
まだ冷たい。
でも緊張で熱くなっている今の私には
ちょうどいいぐらいだった。
「「あのさっ!!」」
2人の声がシンクロする。
翔も、もちろん私も驚いて目を丸くしている。
「俺、先に言ってもいい?」
「う、うん!なに?」
翔は私の目を真っ直ぐに見つめ、
真剣な顔をして口を開いた。
「実は俺、1年の時からずっと、、
ずっと、未央奈のこと好きだった」
一瞬何を言われたのか。
言葉の意味が理解できなかった。
翔が私のことを、、好き、、?
「だから、俺と付き合ってください」
「ほんとにほんと?」
「ほんとだよ。未央奈は?」
心配そうに翔が顔をのぞき込む。
そんなの答えは決まってる。
私は溢れそうになる涙を必死に堪えて
思いっきり笑って言った。
「私も、翔のことずっと好きだったよ」
【完】