〜お弁当〜
〜手作り〜
  「おーい!はやく起きなー!」

「、、いやだー、、まだ眠いー、、、休みたいー。」


私は、父の声で夢の中からいつも引き起こされていた。

いつも、母はいない。
小学校の低学年だった私は、いつも父にお弁当を作ってもらっていた。
父がいつもお弁当を作る理由は一つ。
母は私がハイハイの時期に死んだから。車の事故で。
私をベビーカーに乗せて散歩中に、トラックに巻き込まれたと聞かされていた。
私は運良く、無傷だったと。

 毎朝、いつもの父の声に起こされて台所まで行くと、父はいつも私のお弁当を作ってくれていた。
まだ小さかった私には台所に立つ父の背中は異様に大きく見えた。
毎朝、目をこすりながらその背中を見ていると、私はだんだん目が覚めていった。
起きた時、当たり前の様に台所にある父の姿、安心して嬉しかったんだろう。
 
 私が学校に行き、お昼になると楽しみは2つあった。
1つは、私の好きな物ばかり入っているそのお弁当で、
もう1つは、そのお弁当と一緒に入っている父からの短い一言手紙。
私はいつも食べる前にそれを読んでいた。
 「いっぱいたべろよ。」
 「きょうはなにかな?」
 「ちゃんとべんきょうしたか?」
 「いっぱいあそんでこいよ。」
など、毎日短い手紙が入っていた。似たような手紙の日もあった。
それを読んでから私はいつもお弁当のふたを開けていた。

 「パカッ。」

玉子焼き、からあげ、ソーセージ、、、
どれも荒く盛り付けてあって、首をかしげるような物体もあったが、私は毎日残さず食べて帰っていた。
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