君へ贈るスカーレット
(もういい··私はもう恋愛なんてしない、仕事で経験を積んで男に頼らなくても一人で人生を楽しんで生きていく)そう思ったその時
目の前がぼやけたと思ったらテーブルについていた手に滴が落ちてきた。
驚いて目元を指でこすった。
美咲「やだ私··泣いてる?」
すると···目の前に真っ白なハンカチが現れたので驚いて顔を見上げると、そこには
喫茶コパンのホール係であるおばあさんが
優しい笑顔で立っていた。
おばあさんが言った。
「よかったら使って下さい」
私が軽くお辞儀をしてハンカチを受け取ると
おばあさんは私の肩に優しく手を置いて何も言わずにその場から離れてカウンターの方へ行った。

なんて温かいんだろう···
私はそのハンカチに顔を埋めてしばらく泣いた涼介が出ていってからどれくらいの時間が流れたのか···気が付いたら店の外の街灯に明かりがついていてお客さんは私一人だけになっていた。
美咲「あ··もう、こんな時間··もう出ないとお店閉められないですよね!」
そそくさと店を出ようとしたその時、
カウンターから渋い声が聞こえた。
「もうお帰りですか?」
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