ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
そういえば、はじめてこのうちで織くんと会った時も、『口塞ぐ』『チューするってこと』なんて言われたっけ……。
あぁ、今思い返すと、織くんってそういうハレンチなことサラッと言っちゃったりしちゃうタイプなのかも。
危ない……。
だから天然って怖い。
その絵画のような美しい顔と爽やかさのせいで全然気付かなかった。
でも、ありがとうのハグってことは、それ以外の気持ちはないハグというわけで。
そりゃそうなんだけど!!
うるさい心臓を少しでも落ち着かせようと必死に自分に言い聞かせる。
ありがとうのハグ、ありがとうのハグ。
わかってはいるけど、推しに抱き締められる状況、もう全然理解が出来なくて意識が飛んでしまいそう。
「……白井さんのおかげで、愛菜さんにちゃんと思ってること伝えられた。喜ぶ顔が見られた。本当にありがとう」
もう……そんな風に優しく言われちゃったら、なんでもいいなんて思ってしまうよ。
「織くん……」
いつもより低い声が吐息混じりで耳に届く。
少しくすぐったいけれど心地良くて。
「私こそ、いつもありがとう、織くん」
腰に巻きついた彼の腕。
そのシャツの袖をぎゅっと握って。
もうちょっとだけ、この温もりに触れていたい、なんて欲張りなことを思ってしまった。