ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
ま、まずい……。
実にまずい。
本日2本目の映画が始まって20分弱。
ただいま画面の中では、学生時代にいい雰囲気だった2人が、
大人になって飲み会で偶然の再会をして、帰りに男の人の家でふたりで飲み直しているシーンだ。
酔った女の人が彼の手に触れた瞬間、BGMが止まり。
ふたりの視線が絡む。
これはその……。
確実に……。
さらにヒーローとヒロインの距離が縮んで。
もう、あと数ミリで唇が重なりそうな距離。
あーあーあ。
いやいや別にこういうシーンを見慣れていないわけじゃないけど!!
私の隣にはあの織くんがいるんだ。
こういう甘いシーンを見せるのも申し訳ないし、ていうかシンプルに気まずくて!!
『んっ……ぁっ、』
『ちょっと、変な声出さないでよ』
『だって、東野くんがっ、』
『宗也、でしょ?』
ヒロインの耳元でそう呟いた彼が、彼女の唇を塞いだ。
あーあーあーあー。
頼む。
誰かこのシーンをすっ飛ばしてくれ。