ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。


彼の手のひらが、滑らせるように私の頬を撫でて。


人から、しかも男の子からこんなふうに肌を触られるのは初めてで、心臓がバクバクしすぎて壊れそう。


それに、相手はあの織くんだ。
もう、思考停止してしまいそう。


そんな私におかまいなしに、目の前に影ができたかと思うと。


織くんの顔が私の耳元に迫ってきた。


「あっ、ちょっ……」


首筋を彼の唇がゆっくりなぞるように這うから。背筋がゾクッとして体が反射的に動いてしまう。


なにこれっ。


織くん、こんなことしちゃうの?!


これじゃまるで、さっき画面越しに見てたヒーローと同じ───。


『白井さんが思ってるよりもずっと、欲まみれだよ、俺』


さっきの織くんのセリフを思い出して、さらに心拍数が上がって。



「っ、おっ、織くんっ……くすぐったいっ」


「……気持ちいいの間違いだったりして」


っ?!


耳元で吐息混じりに囁かれて、さらに身をよじる。


無理だ。こんなの。


織くんの唇が、私の首に、触れている。
意味がわらない。


織くんの唇が、手が、触れるたび、体が溶かされていくみたいにどんどん力が抜けていく。

< 160 / 277 >

この作品をシェア

pagetop