ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
〈織 side 〉
キミが俺を知るずっと前から───。
俺はキミを知っていて。
はじめてキミを見たあの日に、きっともう恋に落ちてたんだよ。
あれは、中学3年への進級を控えた春休みのことだった。
塾の授業が始まる2時間ほど前に家を出て、近くのファーストフード店で遅めのお昼ご飯を食べながら、勉強をしていると。
『はぁーー……』
なんて、ちょっとわざとらしく思えるぐらいの大きなため息が隣の席から聞こえてきた。
瞳だけ動かしてチラッと隣を見てみると。
斜め向かいの席で、俺と同い年ぐらいの女の子がテーブルにうなだれていた。
それが、俺が初めて白井さんを見た時だった。
今の白井さんは、学校では基本的にロングの髪の毛を下の方で2つに結んでいるけれど。
当時の白井さんは、前髪も短くて、肩についた毛先が外に軽く跳ねていて今よりもだいぶ幼かった。
『初花の気持ちもわからんでもないけどさ……』
テーブルにべたっと身体を預けた白井さんの向かいには、多分彼女の友達が座っていて。