ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
織くんと恋愛なんて……そんな……。
脳裏によぎるのは、広夢との過去。
怖いんだ。
あの時、私が広夢に恋してしまったせいで、そのせいで欲張りになって、関係が全部壊れてしまったから。
織くんと今の心地いい関係が、そんなもののせいで壊れるのは嫌だ。
知らないふりをしていたい。
自分の気持ちにも、織くんの気持ちにも。
そんなわけないって思いたい。
ていうか……。
「そもそも、織くん、好きな人いるから」
そんな人を好きになったら、もっともっと苦しいでしょう。
「それが、初花ってことじゃないの?」
「……違うから!ね、やめよう、この話──」
「やめないよ」
「……めぐちゃん、」
目を逸らして、美術室を出ようとした私の手をめぐちゃんが捕まえる。
「初花が、そこまで恋愛に臆病になる理由がわからない。織くんに直接嫌いだとか言われたわけ?」
「……そうじゃ、ないけど、」
「じゃあなんで。うちらはね、推しの織くんにも、大好きな初花にも、幸せになって欲しいだけなんだよ」
めぐちゃんがあまりにも真剣な瞳でそう言うから。
なんだかすごく胸がギュッとして。
「何か原因があるなら話してよ」
めぐちゃんの泣きそうな声にそう言われて、私は少しの沈黙の後、自分の過去の話をした。