ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。
何も言わない私を見て「そういえば、おばさん出張行ってるんだって?」と広夢が話を逸らした。
それから、織くんの家にお世話になっていることを話す流れになって。
「へー、じゃあふたり、今一緒に住んでるんだ。大変でしょ、こいつ。ガサツだし、色気ないっつーか、大食いだし」
「ちょっと、広夢っ」
織くんの前で、やめてほしい。
あんな風に私を振ったくせに。
今さら幼なじみ面っていうか……。
ずっと片想いしていた相手にここまで女として見てもらえていないの、織くんにも知られちゃうなんて……。
哀れだよね、あはは。
恥ずかしい。
「ごめん広夢、私たち急いでいるから。さっさとコート取って帰──」
今すぐこの場から消えたくなって、家のドアに手をかけた瞬間。
肩を引き寄せられて。
え──。
織くんの匂いに全身が包まれた。
「っ?!ちょ、織くん?!」
広夢の前で!!なにを!!しているの!!
織くんの手の中に収まった私を見て広夢も固まっている。
「すっごくかわいいよ、白井さんは」
織くんのそのセリフに、顔中が熱くなる。
寒さなんて感じられないぐらい体が火照って。
「……っ」
「白井さんがすごく美味しそうにご飯食べるところ見るとこっちまで幸せな気持ちになるし、とっても思いやりのある子で人の痛みに寄り添える子だし。……ガサツなんて思ったこと一回もない」
「織くん……」
彼の優しくも芯のある声に泣きそうになる。